人生を豊かにする「アタッチメント」とは? その重要性を探る【2/3】

育児

前回の記事では、アタッチメントの概要や親子関係におけるアタッチメントの重要性についてお伝えしました。今回の記事では、「アタッチメント障害」について詳しくまとめていきます。

この記事の要約

アタッチメント障害」は、愛着形成が不十分な場合に起こる状態を指し、生きづらさを感じたりうつ病を引き起こすこともあります。
そして、アタッチメント障害は何歳であっても治すことができるとされています。

アタッチメントと心理的健康

アタッチメント障害とは

愛着が形成される時期に、愛着対象が定まらない・不安定な愛情しか得られない・虐待されていた等の経験があると、安定した愛着が形成されなくなってしまい、社会との関わり方も不自然とならざるを得なくなってしまいます。
こういった状態を「不安定型愛着」と呼び、世の中の3分の1の人が、程度の差はあれど「不安定型愛着」であるとされています。また、特に生きていく上で支障が出るほどの状態であることを「アタッチメント障害(愛着障害)」といいます。

アタッチメント障害には、以下のような問題・症状が生じるとされています。

  • 対人関係やコミュニケーションが不安定になることがある。
  • 自己認識や環境への適応に問題が生じ、生きづらさを感じやすくなる。
  • ストレスへの耐性や対処能力が低下する。
  • 発達障害やADHDに非常に似た症状が現れることがある。
  • 知能が低下し、安定型と不安定型ではIQに平均10以上の差が生じる。
  • 認知機能(聴覚反応、空間認識、問題解決能力など)が低下する。
  • 生きづらさを解消するために依存症や自傷行為に走りやすくなる。
  • 性的活動に問題が生じ、満足を得にくくなる。
  • 倒錯した対人関係の原因にもなることがある。

アタッチメント障害とうつ病の関係性について

アタッチメント障害(愛着障害)は上記に挙げたようなさまざまな精神健康問題を引き起こす可能性があります。特にうつ病との間には密接な関係があることが研究で示されており、以下のような点が指摘されています。

  • 不安定な自己イメージと対人関係の問題アタッチメント障害を持つ人は、不安定な自己イメージや他者との関係で問題を抱えることが多いです。これが長期的にストレスや不安を引き起こし、うつ病の発症リスクを高めます。
  • 情緒調整の困難幼少期に適切な愛着が形成されないと、感情の調整が困難になりやすいです。この情緒調整の困難さが、ストレスに対する脆弱性を高め、うつ病の引き金となることがあります。
  • 孤立感と社会的サポートの欠如アタッチメント障害を持つ人は、他者との深い関係を築くのが難しく、社会的サポートが不足することがあります。この孤立感やサポートの欠如が、うつ病の発症を促します。
窓辺でうなだれる少女の写真

これからの養育で愛着は挽回できる

乳幼児期の愛着形成が重要であることは確かですが、幼少期に不安定型愛着を示しているケースでも、その後の養育環境次第では、安定型愛着となることが分かっています。

愛着の研究者であるメイン氏は、子どもにとって過去に負った不適切な養育や心の傷の有無ではなく、その経験をどのように解消したか(わだかまりを解消できているかどうか)が不安定型愛着となるか安定型愛着となるかを決定づけるとしています。

では、すでに愛着が不安定な状態にある子ども・もしくは大人とは、どのように接してアタッチメント形成を深めていけばよいのでしょうか。次回、最後の記事では、「子ども・大人のアタッチメント障害の治し方」「生涯にわたってアタッチメント形成が大切であること」についてまとめたいと思います。

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