新しい、けれど確かなエビデンスあり!話題の教育プログラム「ハイスコーププログラム」とは?【2/2】

育児

この記事の要約

ハイスコーププログラムを取り入れている保育園では、「プラン(計画)・ドゥ(実行)・レビュー(振り返り)」の実施により自己評価能力や問題解決能力を育てたり、園内の掲示物などにも工夫を凝らしています。プログラムが広く普及しているアメリカやイギリスの良いところを取り入れ、日本でも発展していくことが期待されています。

前回のおさらい

  • ハイスコーププログラムは、アメリカの心理学者デイヴィット・P・ワイカートにより進められた非認知能力を育てる教育プログラム!
  • その前身となったペリー就学前プロジェクトでは、プロジェクトの参加者と非参加者のその後が数十年にわたって調査し続けられており、参加者のほうが学業・収入等多くの点で優れた結果となっている!

ハイスコーププログラムの具体的な内容とは?

では、実際にハイスコーププログラムを取り入れている保育園での一日の過ごし方を例に、プログラムの具体的な内容についてご紹介していきます。

とある保育園での毎日の過ごし方

ハイスコーププログラムの中心的な要素として、「プラン(計画)・ドゥ(実行)・レビュー(振り返り)」というものがあります。
これは「遊びを計画し、実行し、振り返る」という流れですが、子どもたち自身で計画を立て、その計画に対して振り返りを行うことで、自己評価能力や問題解決能力を養うことができます。

とある保育園では、以下のようにして毎日のプラン・ドゥ・レビューを取り入れています。

プラン(Plan)の時間を設ける

  • 開始時間の設定:一日の始まりや特定の遊びの前に、子どもたちが計画を立てる時間を設けます。例えば、朝の集まりの時間などが適しています。
  • 計画の指導:教師は子どもたちに「今日、どんな遊びをしたいか?」、「どんなおもちゃや道具を使いたいか?」、「誰と一緒に遊びたいか?」などの質問をして、計画を具体的に考える手助けをします。
  • 計画の記録:子どもたちが自分の計画を絵や言葉で表現する時間を与えます。幼児であれば絵を描いたり、教師が子どもの話を記録したりする形が考えられます。

ドゥ(Do)の時間を設ける

  • 自由遊びの時間:計画に基づいて自由に遊ぶ時間を設けます。この時間中、子どもたちは自分の計画を実行します。
  • 環境の整備:教室や遊び場の環境を、子どもたちが計画した遊びを実行しやすいように整備します。必要な道具や材料が揃っていることが大切です。
  • 教師のサポート:教師は子どもたちの遊びを観察し、必要に応じてサポートを提供します。ただし、子どもたちが自主的に遊びを進めることを優先し、過度な介入は避けます。

レビュー(Review)の時間を設ける

  • 振り返りの時間:遊びが終わった後に、子どもたちがその活動を振り返る時間を設けます。例えば、遊びの終了前に集まりの時間を設けると良いでしょう。
  • 共有と発表:子どもたちが自分の遊びの成果や感じたことをグループで共有します。教師は子どもたちに「今日は何をしたのか?」、「どんなことが楽しかったか?」、「次に何を改善したいか?」などの質問を投げかけます。
  • フィードバック:教師と他の子どもたちからのフィードバックを受けることで、自己評価能力や他者からの意見を受け入れる姿勢が養われます。

このように「プラン・ドゥ・レビュー」を日常の遊びに取り入れることで、子どもたちの自主性、計画力、問題解決能力、自己評価能力、コミュニケーション能力などが向上します。このプロセスを通じて、子どもたちは自分で考え、行動し、振り返る力を養い、成長することができます。

ただ遊ぶだけではなく、遊びを通して問題解決力やものごとを振り返ってまとめる力、言語化して表現する力なども育てているんだね。これを毎日行っているとなると、卒園する頃にはかなり力が身につきそう!

園内の掲示物について

子どもたちの過ごす部屋に以下のような掲示物を貼ることによっても、ハイスコーププログラムの効果を得ることができます。

  • テーマの掲示:現在取り組んでいるテーマやプロジェクトに関連する情報を掲示します。例えば、季節や特定のイベントに関する掲示物が考えられます。これにより、子どもたちはテーマに対する理解を深めやすくなります。
  • 計画の掲示:プラン・ドゥ・レビューのプロセスを示す掲示物を設置します。これにより、子どもたちは自分の活動の各ステップを理解しやすくなり、次に何をするかを予測しやすくなります。
  • 発言の記録:活動中や振り返りの時間に子どもたちが発言した内容を掲示します。これにより、子どもたちの考えや感じたことが可視化され、他の子どもたちや保護者との共有が促進されます。また、子どもたちは自分の考えや意見が尊重されていることを感じることができます。
  • 活動の写真:活動中の写真を撮影し、活動内容とともに掲示します。写真は子どもたちの興味や関心を引き出し、振り返りの際に有効です。
  • 成果の展示:子どもたちが行った活動や作品を掲示します。これには、絵、工作物、写真などが含まれます。子どもたちは自分の成果を誇りに思い、達成感を得られます

廊下に子どもやお友達の作品が貼ってあったりすると、子どもとの会話のきっかけにもなるね。

海外での取り組みはどんな感じ?

ハイスコーププログラムの普及が特に進んでいる国には、アメリカ、イギリス、および日本が挙げられます。それぞれの国での普及状況や取り組みについて詳しく見ていきましょう。

アメリカでの取り組みの特徴

  • エビデンスベースのアプローチ:プログラムの効果を科学的に評価し、データに基づいて継続的に改良が重ねられています。
  • 包括的な支援:特に教育機会の少ない地域や貧困層の子供たちのために、教育機会の平等化を目指した取り組みが強化されています。

イギリスでの取り組みの特徴

  • 親と家庭の連携:家庭での学びと保育施設での学びが一貫するよう、親の参加が奨励されており、家庭と教育機関が連携して子供の成長を支える仕組みが整っています。
  • 実践的なアプローチ:子供たちの興味を引き出し、遊びを通じた学びや実際の生活に結びついた学びが推進されています。

日本での取り組みの特徴

  • 細やかなサポート:子供一人ひとりのニーズに応じたきめ細やかな支援が行われています。
  • 文化的適応:日本の文化や教育環境に合わせてプログラムが調整されています。

調整の内容としては、
日本の四季に合わせた伝統行事の体験を取り入れる
協調性を重視する日本の価値観を尊重して共同作業やグループ活動をバランスよく取り入れる
地域社会とのつながりを深めるために地元のお祭りやイベントに参加する
等が例として挙げられているよ。

各国の共通点について

  1. 子どもの自主性の尊重:子供たちが自主的に活動を計画し、実行し、振り返るプロセスが共通して重要視されています。
  2. 教師の役割:教師は子供たちの活動を観察し、必要に応じてサポートするファシリテーターの役割を担っています。
  3. 学習環境の整備:子供たちが自由に探索し、学べるように環境が整えられています。教室や遊び場の設計において、子供たちがアクセスしやすく、活動をサポートする配置がされています。
  4. 親と地域の連携:保護者との連携が重要視されており、定期的な情報交換や親子参加のイベントが行われています。

上記のような点が共通点として挙げられます。

まとめ

ハイスコーププログラムは、子どもたちの自主性や深く考える力、自己肯定感を育てる強力なツールです。日本ではまだ、広く知られている・保育の世界で十分に取り入れられているとは言い難いかもしれませんが、今後国や自治体の積極的な活動支援が拡がっていくことを願います。

また、デジタルな技術を取り入れることにより、オンラインプラットフォームを通じたリソースの共有や、デジタルツールを使った子どもたちの活動の記録と振り返りが可能になったりと、よりプログラムの発展につながる可能性を秘めています。

ハイスコーププログラムを学ぶには?

日本でハイスコーププログラムを広め、運営している団体である「ハイスコープジャパン」が、プログラムについて気軽に学べるセミナーを不定期に開催しています。(直近では2024年5月にオンラインで開催されました。)
保育園関係者にかかわらずだれでも参加が可能なので、興味を持った方はHPを調べたりお問い合わせをしていただくのも良いかもしれません。
また、教材のオンライン購入はまだ準備中とのことですが、今後可能になるとのことです。

当ブログではこれからも保育や教育に役立つ話題をまとめていきます!
感想もぜひお待ちしています♪

参考文献

HighScope
ハイスコープジャパン
The High/Scope Perry Preschool Study Through Age 40
HighScopeカリキュラムの特徴と日本の幼児教育への示唆ー2019年アメリカ・HighScope等関連教育施設の視察を中心としてー
HighScope(ハイスコープ) – 早期療育最前線 –
ReseMom 質の高い幼児教育、ハイスコープカリキュラムとは?

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