はじめに
妊娠や出産は希望に満ち溢れた一大イベントでありながら
その変化の大きさは、ときに心や体を不安定にさせる大きなストレスにもなります。
産前産後のメンタル不調について、どのように防いでいき、
また、どのように対処したら良いのでしょうか?
NHKで放送されている「すくすく子育て」でも産前産後のメンタル不調についての特集が組まれていました。番組で放送された内容を軸にまとめていきたいと思います。

産前産後に起こりうるメンタル不調の症状とは?
番組内では、
・産前産後のメンタル不調を体験したママ達のお話
・それに対する助産師さんからの専門的なアドバイス
が聞けましたので、内容をまとめておきます。
Case1.子どもを可愛いと思えない

不妊治療をして授かった長男の出産時には喜びでいっぱいだったのですが
1年後に誕生した次男のことは可愛いと思えない日々が続いていました。
おもな原因
- コロナ禍での出産のため病院への付き添いが出来ず、長男に寂しい思いをさせてしまった。
- 予定日より早く、小さく生まれた次男については二人目とはいえ初めての経験が多く不安だった。
- 次男の妊娠中に夫の単身赴任が決まり、実母も他界しており頼れず、ワンオペ育児が続いた。
どうやって解決した?
- 子どもを可愛いと思えないことについて、実父に早めに相談することができた。
- 「徐々に下の子への気持ちも追いついてくるから、あまり考えこまなくていいよ」と言われ、気持ちを落ち着けることができた。
助産師さんからのアドバイス
- 上の子とは今までずっと一緒に過ごしてきたので、可愛いと思えるのは当たり前。
- 逆に上の子を可愛いと思えなくなることもある。
- 色々なパターンがあり、子どもを可愛いと思えないのはどんな親にでもあることなので、自分を責めないでほしい。
- 信頼できる人に自分の気持ちを話すのが大切。
Case2.三人目の子どもを妊娠中、夕方にいつも不安が襲ってくる

三人目を妊娠し、まわりからももうベテランだね~なんて言われていたのですが、妊娠中は夕方になるといつも不安が襲ってきて、耐えられず夕食中に一人外へ飛び出してしまったことも…。
おもな原因
- 子育てには慣れているからと、迷惑をかけないよう周りを頼らないようにしたり、周りの人も特段心配をしていなかった。
どうやって解決した?
- 地域の保健師に相談し、「話してくれてよかった」と笑顔で話を聞いてもらったことにより気持ちがすっと落ち着き、相談後は不安になる回数が明らかに減った。
助産師さんからのアドバイス
- 上の子を育てながら妊娠の経過を見ていくというのは、初産の時とは違った大変さがある。
- 二人目、三人目だから慣れていると周りが思わないで、必要な支援をする必要がある。
- 信頼できる相談先を持っておいたり、専門家と早めにつながっておく。
Case3.同居する親とのトラブルを避けて出産前に引っ越したが…

妊娠中、同居している実親とトラブルになり、衝突を避けるため出産前に引っ越しましたが、慣れない土地で孤独感とストレスが強くなりました。出産後は初めての育児で慣れないことばかりで自分を追い詰め、パニック発作を起こし病院で産後うつと診断されました。
おもな原因
- 妊娠・出産と引っ越しという大きな環境の変化が続いた。
- 自分のことを追い詰めてしまっていた(自己評価が低くなるのも産後うつの症状の一つ。)
どうやって解決した?
- 病院で服薬、カウンセリング等を受けて治療を進めた。
助産師さんからのアドバイス
- 妊娠中に引っ越す人は案外多いが、ただでさえ大変な時に環境が変わってしまうのはできたら避けた方が良い。
- 引っ越す場合は、早めに周囲との関係を築くようにする。
- 産後うつを発症してしまっても、きちんと診断・治療を受ければ治すことができる。
マタニティブルーズと産後うつの違い
マタニティブルーズ | 産後うつ | |
---|---|---|
定義 | 出産から産後1か月に起こる自律神経、精神状態が不安定な心理状態のこと | マタニティブルーズが通常1-2週間で改善するのに対し、2週間以上持続する、自律神経、精神状態が不安定な心理状態のこと |
発症する割合 | 25~50% | 10%ほど |
症状 | ・情緒不安定(ちょっとしたことで怒ったり涙が出たりする) ・やる気が起きない | ・悲しみが強い ・頻繁に泣く ・気分の変動が強い ・簡単に怒る ・疲労感が強い ・寝すぎる、もしくは眠れない ・頭痛、身体の痛み ・活動への興味がなくなる ・不安発作またはパニック発作 ・食欲がなくなる、もしくは食べ過ぎる ・子どもに対する関心がなくなる ・なぜだかわからない無力感と絶望感 ・罪悪感 ・子どもを傷つけることを強く心配をする ・自殺念慮 |
期間 | 1-2週間程度で自然と改善 | 産後3か月以内に発症することが多く、2週間以上持続する |
原因 | ・妊娠出産による女性ホルモンの急激な減少 ・出産の疲れ ・生活の変化 ・育児の疲れ ・不眠、プレッシャー、不安、孤独など | ・慣れない育児に対するストレス ・周囲のサポート不足 ・睡眠不足 などの複数の要因が重なっている場合がある ・産後の女性ホルモンの大きな変化による影響 |
治療法 | ・いつまでも長く続く症状でないということを理解する ・産前、産後に起こっている身体の変化を自覚する ・家族にも知ってもらう ・ママ友や経験者から話を聞いたり、不安を共有する | ・自然に改善することは難しく、治療が必要になる ・精神科医の診断が必要 ・ストレスを減らすための環境調整 ・薬物療法 ・パートナー、家族、医療スタッフ、地域の保健師などとの連携・協力 |
男性にも増えている!パパにも起こりうる産後うつ
近年では男性の育児参加が増えたことにより、8~10%のパパが産後うつに悩まされているとのことです。
自分の父親が育児をする姿を見ていないことによる
ロールモデルの不在(ロールモデル:考え方や行動の規範になる=お手本とする人物)や、
子どもと二人きりの環境はパパであっても孤独で疲れるものであることが原因として挙げられます。
また、パパの育児参加が増えてきたものの、行政や地域の支援にはパパ向けのものが少なく、今後の課題となっています。

産前産後のメンタル不調を防ぐ・治すために大切なこと
番組で話されていたママ達の症状の改善のきっかけとして、
誰かに相談すること
が大切だというのが共通しています。
私自身もワンオペ育児が多いので、育児が孤独なものだというのは痛いほど身に染みて理解しています。「大人と話せること」、それだけでも本当に気分転換になります。
もしこれを見てくださっているパパさんがいたら、近くで話を聞いてくれるだけでも支えになると思うので、ぜひ一緒の時間を過ごしたり、ママ一人の時間を作ってあげてください。

このようなことを心がけよう
- ひとりで悩まない。
- 家族だけで解決できない場合は、抱え込まず、専門家のアドバイスを受ける。
- 一人になれる時間を少しでも持ち、気分転換をする。
社会全体の改革も必要
- 核家族化・少子化により、自分の子以外の赤ちゃんに触れる機会が少ないため、出産後の育児のスキル(抱っこ、沐浴、授乳など)を学ぶ機会の増加が必要
- 働き方の改革により、家庭で過ごせる時間の増加が必要
- 手続きが明瞭かつ簡単で、利用のハードルが低いサポート制度の設立
心の不調を感じた時の相談先一覧
日本助産師会 女性のあらゆる相談室(無料電話相談)
📞03-3866-3072
毎週火曜10:00~16:00
支援情報検索サイト
どこに相談すべきか悩んだ時は、こちらの相談窓口をご覧ください。
地域、相談方法(電話・メール・SNS等)別での窓口への案内があります。
・保健センター(リンクは東京都のもの)※各地区に相談窓口あり
・子ども家庭支援センター(リンクは大田区のもの)※各地区に相談窓口あり
・精神保健福祉センター(全国)
等を積極的に頼りましょう。
自治体によってはオンラインでの相談を受け付けているところもあります。

まとめ
産前産後のメンタルケアは、母親だけでなく父親にも関わる重要な課題です。
現代の核家族化や社会の変化により、孤独感やストレスを感じることが増え、心の不調を訴える人が増えていますが、早期の対策や周囲のサポートによって、これらの問題を乗り越えることは可能です。
今回ご紹介した経験談や専門家の意見、相談先の情報を参考に、少しでも心のケアについての理解を深めていただければ幸いです。特に、心の不調を感じた際には、一人で抱え込まずに積極的にサポートを求めてくださいね。
あなたの感じる不安や悩みは決して一人だけのものではありません。
同じ経験を共有する仲間や専門家のサポートを受けながら、健やかな育児生活を送ることを心から願っています!

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